、左右の兵衛《ひょうえ》に属した鷹匠《たかじょう》たちは大柄な、目だつ摺衣《すりぎぬ》を着ていた。女の目には平生見|馴《な》れない見物事であったから、だれかれとなしに競って拝観をしようとしたが、貧弱にできた車などは群衆に輪をこわされて哀れな姿で立っていた。桂《かつら》川の船橋のほとりが最もよい拝観場所で、よい車がここには多かった。六条院の玉鬘《たまかずら》の姫君も見物に出ていた。きれいな身なりをして化粧をした朝臣《あそん》たちをたくさん見たが、緋《ひ》のお上着を召した端麗な鳳輦《ほうれん》の中の御姿《みすがた》になぞらえることのできるような人はだれもない。玉鬘は人知れず父の大臣に注意を払ったが、噂《うわさ》どおりにはなやかな貫禄《かんろく》のある盛りの男とは見えたが、それも絶対なりっぱさとはいえるものでなくて、だれよりも優秀な人臣と見えるだけである。きれいであるとか、美男だとかいって、若い女房たちが蔭《かげ》で大騒ぎをしている中将や少将、殿上役人のだれかれなどはまして目にもたたず無視せざるをえないのである。帝は源氏の大臣にそっくりなお顔であるが、思いなしか一段崇高な御|美貌《びぼう》と
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