ございます時などに聞くことができますでしょうか。田舎《いなか》の人などもこれはよく習っております琴ですから、気楽に稽古《けいこ》ができますもののように私は思っていたのでございますがほんとうの上手《じょうず》な人の弾くのは違っているのでございましょうね」
 玉鬘は熱心なふうに尋ねた。
「そうですよ。あずま琴などとも言ってね、その名前だけでも軽蔑《けいべつ》してつけられている琴のようですが、宮中の御遊《ぎょゆう》の時に図書の役人に楽器の搬入を命ぜられるのにも、ほかの国は知りませんがここではまず大和《やまと》琴が真先《まっさき》に言われます。つまりあらゆる楽器の親にこれがされているわけです。弾《ひ》くことは練習次第で上達しますが、お父さんに同じ音楽的の遺伝のある娘がお習いすることは理想的ですね。私の家などへも何かの場合においでにならないことはありませんが、精いっぱいに弾かれるのを聞くことなどは困難でしょう。名人の芸というものはなかなか容易に全部を見せようとしないものですからね。しかしあなたはいつか聞けますよ」
 こう言いながら源氏は少し弾いた。はなやかな音であった。これ以上な音が父には出るの
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