まり系統がきちんとしていて王風《おおぎみふう》の点が気に入らないのですかね」
と源氏が言った。
「来まさば(おほきみ来ませ婿にせん)というような人もあすこにはあるのではございませんか」
「いや、何も婿に取られたいのではありませんがね。若い二人が作った夢をこわしたままにして幾年も置いておかれるのは残酷だと思うのです。まだ官位が低くて世間体がよろしくないと思われるのだったら、公然のことにはしないで私へお嬢さんを託しておかれるという形式だっていいじゃないのですか。私が責任を持てばいいはずだと思うのだが」
源氏は歎息《たんそく》した。自分の実父との間にはこうした感情の疎隔があるのかと玉鬘《たまかずら》ははじめて知った。これが支障になって親に逢《あ》いうる日がまだはるかなことに思わねばならないのであるかと悲しくも思い、苦しくも思った。月がないころであったから燈籠《とうろう》に灯《ひ》がともされた。
「灯が近すぎて暑苦しい、これよりは篝《かがり》がよい」
と言って、
「篝を一つこの庭で焚《た》くように」
と源氏は命じた。よい和琴《わごん》がそこに出ているのを見つけて、引き寄せて、鳴らしてみ
前へ
次へ
全29ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング