時々あちらへ行って、いろんなことを見習うがいいと思う。平凡な人間も貴女《きじょ》がたの作法に会得《えとく》が行くと違ってくるものだからね。そんなつもりであちらへ行こうと思いますか」
とも言った。
「まあうれしい。私はどうかして皆さんから兄弟だと認めていただきたいと寝ても醒《さ》めても祈っているのでございますからね。そのほかのことはどうでもいいと思っていたくらいでございますからね。お許しさえございましたら女御さんのために私は水を汲《く》んだり運んだりしましてもお仕えいたします」
なお早口にしゃべり続けるのを聞いていて大臣はますます憂鬱《ゆううつ》な気分になるのを、紛らすために言った。
「そんな労働などはしないでもいいがお行きなさい。あやかったお坊さんはなるべく遠方のほうへやっておいてね」
滑稽《こっけい》扱いにして言っているとも令嬢は知らない。また同じ大臣といっても、きれいで、物々しい風采《ふうさい》を備えた、りっぱな中のりっぱな大臣で、だれも気おくれを感じるほどの父であることも令嬢は知らない。
「それではいつ女御さんの所へ参りましょう」
「そう、吉日でなければならないかね。なにい
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