にしよう、そして自分の恋人にもしておこう、処女である点が自分に躊躇《ちゅうちょ》をさせるのであるが、結婚をしたのちもこの人に深い愛をもって臨めば、良人《おっと》のあることなどは問題でなく恋は成り立つに違いないとこんなけしからぬことも源氏は思った。それを実行した暁にはいよいよ深い煩悶《はんもん》に源氏は陥ることであろうし、熱烈でない愛しようはできない性質でもあるから悲劇がそこに起こりそうな気のすることである。
内大臣が娘だと名のって出た女を、直ちに自邸へ引き取った処置について、家族も家司《けいし》たちもそれを軽率だと言っていること、世間でも誤ったしかただと言っていることも皆大臣の耳にははいっていたが、弁《べん》の少将が話のついでに源氏からそんなことがあるかと聞かれたことを言い出した時に大臣は笑って言った。
「そうだ、あすこにも今まで噂《うわさ》も聞いたことのない外腹の令嬢ができて、それをたいそうに扱っていられるではないか。あまりに他人のことを言われない大臣だが、不思議に私の家のことだと口の悪い批評をされる。このことなどはそれを証明するものだよ」
「あちらの西の対の姫君はあまり欠点もない
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