をお得になった宮は、お喜びになって目だたぬふうで訪《たず》ねておいでになった。妻戸の室に敷き物を設けて几帳《きちょう》だけの隔てで会話がなさるべくできていた。心憎いほどの空薫《そらだ》きをさせたり、姫君の座をつくろったりする源氏は、親でなく、よこしまな恋を持つ男であって、しかも玉鬘《たまかずら》の心にとっては同情される点のある人であった。宰相の君なども会話の取り次ぎをするのが晴れがましくてできそうな気もせず隠れているのを源氏は無言で引き出したりした。
 夕闇《ゆうやみ》時が過ぎて、暗く曇った空を後ろにして、しめやかな感じのする風采《ふうさい》の宮がすわっておいでになるのも艶《えん》であった。奥の室から吹き通う薫香《たきもの》の香に源氏の衣服から散る香も混じって宮のおいでになるあたりは匂《にお》いに満ちていた。予期した以上の高華《こうげ》な趣の添った女性らしくまず宮はお思いになったのであった。宮のお語りになることは、じみな落ち着いた御希望であって、情熱ばかりを見せようとあそばすものでもないのが優美に感ぜられた。源氏は興味をもってこちらで聞いているのである。姫君は東の室に引き込んで横になっ
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