《きっさき》をはずさせるように工夫《くふう》するのだね。おもしろい手紙だよ」
と言って、源氏はその手紙をすぐにも下へ置かずに見ていた。
「私がいろいろと考えたり、言ったりしていても、あなたにこうしたいと思っておいでになることがないのであろうかと、気づかわしい所もあります。内大臣に名のって行くことも、まだ結婚前のあなたが、長くいっしょにいられる夫人や子供たちの中へはいって行って幸福であるかどうかが疑問だと思って私は躊躇《ちゅうちょ》しているのです。女として普通に結婚をしてから出会う機会をとらえたほうがいいと思うのですが、その結婚相手ですね、兵部卿の宮は表面独身ではいられるが、女好きな方で、通ってお行きになる人の家も多いようだし、また邸《やしき》には召人《めしゅうど》という女房の中の愛人が幾人もいるということですからね、そんな関係というものは、夫人になる人が嫉妬《しっと》を見せないで自然に矯正《きょうせい》させる努力さえすれば、世間へ醜態も見せずに穏やかに済みますが、そうした気持ちになれない性格の人は、そんなつまらぬことから夫婦仲がうまくゆかずに、良人《おっと》の愛を失ってしまう結果にも
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