むつ》まじくすることを勧めていた。中将はいつもまじめで、よけいな想像などはしないふうで、姉と信じていた。内大臣家の公達《きんだち》も中将に伴われてこちらの御殿へ、下心をほのめかすふうに来たりもするのであるが、そうした問題ではなしに、なつかしい気持ちでほんとうの兄弟たちを玉鬘はながめていた。実父に逢《あ》いたいと常に人知れず思うのであるが、その素振りは見せずに、信頼しきった様子だけが源氏に見えるのも、いっそう可憐《かれん》に、いっそう処女らしくこの人を思わせた。似ているというのではないがやはり母の夕顔のよさがそのままこの人にもあって、その上に才女らしいところが添っていた。
衣がえをする初夏は、空の気持ちなども理由なしに感じのよい季節であるが、閑暇《ひま》の多い源氏はいろいろな遊び事に時を使っていた。玉鬘のほうへ男性から送って来る手紙の多くなることに興味を持って、またしても西の対へ出かけてはそれらの懸想文《けそうぶみ》を源氏は読むのであった。あるものは返事を書けと源氏が勧めたりするのを玉鬘は苦しく思った。兵部卿《ひょうぶきょう》の宮がまだ何ほどの時間が経過しているのでもないのに、もうあせ
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