いってから、脚《あし》を撫《な》でさせるために源氏は右近を呼んだ。
「若い人はいやな役だと迷惑がるからね。やはり昔|馴染《なじみ》の者は気心が双方でわかっていてどんなことでもしてもらえるよ」
 と源氏が言っているのを聞いて、若い女房たちは笑っていた。
「そうですよ。どんなことでもさせていただいて私たちは結構なんですけれど、あの御戯談《ごじょうだん》に困るだけね」
 などと言っているのであった。
「奥さんも昔馴染どうしがあまり仲よくしては機嫌《きげん》を悪くなさらない。決して寛大な方ではないから危《あぶな》いね」
 などと言って源氏は笑っていた。愛嬌《あいきょう》があって常よりもまた美しく思われた。このごろは公職が閑散なほうに変ってしまって、自宅でものんきに女房などにも戯談を言いかけて相手をためすことなどを楽しむ源氏であったから、右近のような古女《ふるおんな》にも戯れてみせるのである。
「発見したって、どんな人かね。えらい修験者《しゅげんじゃ》などと懇意になってつれて来たのか」
 と源氏は言った。
「ひどいことをおっしゃいます。あの薄命な夕顔のゆかりの方を見つけましたのでございます」

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