価値を十分ご存じでいらっしゃるでしょうが、御自分のお口から最上の美人の数へお入れにはなりにくいのですよ。こんなこともお言いになることがあるのですよ、あなたは私と夫婦になれたりしてもったいなく思いませんかなどと戯談《じょうだん》をね。お二人のそろいもそろったお美しさを拝見しているだけで命も延びる気がするのですよ。あんな方はあるものでもありません、私がそんなに思う六条院の奥様にどこ一つ姫君は劣っていらっしゃいません。物は限りがあってすぐれた美貌と申しても円光を後ろに負っていらっしゃるわけではありませんけれど、これがほんとうに美しいお顔と申し上げていいのでございましょう」
右近は微笑《ほほえ》んで姫君をながめていた。少弐《しょうに》の未亡人もうれしそうである。
「こんなすぐれたお生まれつきの方を、もう一歩で暗い世界へお沈めしてしまうところでしたよ。惜しくてもったいなくて、家も財産も捨てて頼《たよ》りにしてよい息子《むすこ》にも娘にも別れて、今ではかえって知らぬ他国のような心細い気のする京へ帰って来たのですよ。あなた、どうぞいい智慧《ちえ》を出してくだすって、姫君の御運を開いてあげてください
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