ます。姫君も大人《おとな》になっておいでになります。何よりおとど[#「おとど」に傍点]さんにこの話を」
と、言って三条は向こうへ行った。九州から来た人たちの驚いたことは言うまでもない。
「夢のような気がします。どれほど恨んだかしれない方にお目にかかることになりました」
おとど[#「おとど」に傍点]はこう言って幕の所へ来た。もうあちらからも、こちらからも隔てにしてあった屏風《びょうぶ》などは取り払ってしまった。右近もおとど[#「おとど」に傍点]も最初はものが言えずに泣き合った。やっとおとど[#「おとど」に傍点]が口を開いて、
「奥様はどうおなりになりました。長い年月の間夢にでもいらっしゃる所を見たいと大願を立てましたがね、私たちは遠い田舎の人になっていたのですからね、何の御様子も知ることができません。悲しんで、悲しんで、長生きすることが恨めしくてならなかったのですが、奥様が捨ててお行きになった姫君のおかわいいお顔を拝見しては、このまま死んでは後世《ごせ》の障《さわ》りになると思いましてね、今でもお護《も》りしています」
おとど[#「おとど」に傍点]の話し続ける心持ちを思っては、昔あ
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