べの少ない点で絶えず私の気がかりになったものですが、それも安心のできるようになりました。善良な女で、私と双方でよく理解し合っていますから朗らかなものです。私がまた世の中へ帰って朝政に与《あずか》るような喜びは私にたいしたこととは思われないで、そうした恋愛問題のほうがたいせつに思われる私なのですから、どんな抑制を心に加えてあなたの御後見だけに満足していることか、それをご存じになっていますか、御同情でもしていただかなければかいがありません」
と源氏は言った。面倒《めんどう》な話になって、宮は何ともお返辞をあそばさないのを見て、
「そうですね、そんなことを言って私が悪い」
と話をほかへ源氏は移した。
「今の私の望みは閑散な身になって風流|三昧《ざんまい》に暮らしうることと、のちの世の勤めも十分にすることのほかはありませんが、この世の思い出になることを一つでも残すことのできないのはさすがに残念に思われます。ただ二人の子供がございますが、老い先ははるかで待ち遠しいものです。失礼ですがあなたの手でこの家の名誉をお上げくだすって、私の亡《な》くなりましたのちも私の子供らを護《まも》っておやりくだ
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