物を引き出して退屈しのぎにしていた。古歌などもよい作を選《よ》って、端書きも作者の名も書き抜いて置いて見るのがおもしろいのであるが、この人は古紙屋紙《ふるかんやがみ》とか、檀紙《だんし》とかの湿り気を含んで厚くなった物などへ、だれもの知っている新味などは微塵《みじん》もないようなものの書き抜いてしまってあるのを、物思いのつのった時などには出して拡《ひろ》げていた。今の婦人がだれもするように経を読んだり仏勤めをしたりすることは生意気だと思うのかだれも見る人はないのであるが、数珠《じゅず》を持つようなことは絶対にない。こんなふうに末摘花は古典的であった。
侍従という乳母《めのと》の娘などは、主家を離れないで残っている女房の一人であったが、以前から半分ずつは勤めに出ていた斎院がお亡《か》くれになってからは、侍従もしかたなしに女王《にょおう》の母君の妹で、その人だけが身分違いの地方官の妻になっている人があって、娘をかしずいて、若いよい女房を幾人でもほしがる家へ、そこは死んだ母もおりふし行っていた所であるからと思って、時々そこへ行って勤めていた。末摘花は人に親しめない性格であったから、叔母《お
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