なんらかを暗示するものだと解釈しておられるようでございます。仁王会《にんおうえ》を宮中であそばすようなことも承っております。大官方が参内《さんだい》もできないのでございますから、政治も雨風のために中止の形でございます」
こんな話を、はかばかしくもなく下士級の頭で理解しているだけのことを言うのであるが、京のことに無関心でありえない源氏は、居間の近くへその男を呼び出していろいろな質問をしてみた。
「ただ例のような雨が少しの絶え間もなく降っておりまして、その中に風も時々吹き出すというような日が幾日も続くのでございますから、それで皆様の御心配が始まったものだと存じます。今度のように地の底までも通るような荒い雹《ひょう》が降ったり、雷鳴の静まらないことはこれまでにないことでございます」
などと言う男の表情にも深刻な恐怖の色の見えるのも源氏をより心細くさせた。
こんなことでこの世は滅んでいくのでないかと源氏は思っていたが、その翌日からまた大風が吹いて、海潮が満ち、高く立つ波の音は岩も山も崩《くず》してしまうように響いた。雷鳴と電光のさすことの烈《はげ》しくなったことは想像もできないほどである
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