いませんか」
 とまじめに源氏が頼むと女房たちも、
「おっしゃることのほうがごもっともでございます。お気の毒なふうにいつまでもお立たせしておきましては済みません」
 ととりなす。どうすればよいかと御息所は迷った。潔斎所《けっさいじょ》についている神官たちにどんな想像をされるかしれないことであるし、心弱く面会を承諾することによって、またも源氏の軽蔑《けいべつ》を買うのではないかと躊躇《ちゅうちょ》はされても、どこまでも冷淡にはできない感情に負けて、歎息《たんそく》を洩《も》らしながら座敷の端のほうへ膝行《いざっ》てくる御息所の様子には艶《えん》な品のよさがあった。源氏は、
「お縁側だけは許していただけるでしょうか」
 と言って、上に上がっていた。長い時日を中にした会合に、無情でなかった言いわけを散文的に言うのもきまりが悪くて、榊《さかき》の枝を少し折って手に持っていたのを、源氏は御簾《みす》の下から入れて、
「私の心の常磐《ときわ》な色に自信を持って、恐れのある場所へもお訪《たず》ねして来たのですが、あなたは冷たくお扱いになる」
 と言った。

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神垣《かみがき》は
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