この子の目つき顔つきがまたよく母に似ていますから、この子とあなたとを母と子と見てもよい気がします」
など帝がおとりなしになると、子供心にも花や紅葉《もみじ》の美しい枝は、まずこの宮へ差し上げたい、自分の好意を受けていただきたいというこんな態度をとるようになった。現在の弘徽殿の女御の嫉妬《しっと》の対象は藤壺の宮であったからそちらへ好意を寄せる源氏に、一時忘れられていた旧怨《きゅうえん》も再燃して憎しみを持つことになった。女御が自慢にし、ほめられてもおいでになる幼内親王方の美を遠くこえた源氏の美貌《びぼう》を世間の人は言い現わすために光《ひかる》の君《きみ》と言った。女御として藤壺の宮の御|寵愛《ちょうあい》が並びないものであったから対句のように作って、輝く日の宮と一方を申していた。
源氏の君の美しい童形《どうぎょう》をいつまでも変えたくないように帝は思召したのであったが、いよいよ十二の歳《とし》に元服をおさせになることになった。その式の準備も何も帝御自身でお指図《さしず》になった。前に東宮の御元服の式を紫宸殿《ししんでん》であげられた時の派手《はで》やかさに落とさず、その日官人たち
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