るだけの人もないのであるという失望をお味わいになっただけである。そうしたころ、先帝――帝《みかど》の従兄《いとこ》あるいは叔父君《おじぎみ》――の第四の内親王でお美しいことをだれも言う方で、母君のお后《きさき》が大事にしておいでになる方のことを、帝のおそばに奉仕している典侍《ないしのすけ》は先帝の宮廷にいた人で、后の宮へも親しく出入りしていて、内親王の御幼少時代をも知り、現在でもほのかにお顔を拝見する機会を多く得ていたから、帝へお話しした。
「お亡《かく》れになりました御息所《みやすどころ》の御|容貌《ようぼう》に似た方を、三代も宮廷におりました私すらまだ見たことがございませんでしたのに、后の宮様の内親王様だけがあの方に似ていらっしゃいますことにはじめて気がつきました。非常にお美しい方でございます」
もしそんなことがあったらと大御心《おおみこころ》が動いて、先帝の后の宮へ姫宮の御入内《ごじゅだい》のことを懇切にお申し入れになった。お后は、そんな恐ろしいこと、東宮のお母様の女御《にょご》が並みはずれな強い性格で、桐壺の更衣《こうい》が露骨ないじめ方をされた例もあるのに、と思召して話はそ
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