た結果として、今日では先ず日本内地では殆ど成り立たない事になりました。修学旅行というが如きもなかなか修業的旅行とは云えません。すべてが発達し開明した結果、今日では日本内地の旅行は先ず昔の所謂「江の島鎌倉見物」「石尊参り」「伊勢詣」「大和めぐり」「箱根七湯めぐり」などという旅行と同様、即ち遊山旅と丁度同様になって居るかと思います。可愛い子に旅行をさせろなどという語がありますが、今日では内地の旅行はすべてが遊山旅行になって居ますから、可愛い子に旅をさせたところで何にもなりません。却って宿屋で酒を飲みおぼえたり女にからかったりする事を知り初める位が結局《おち》です。もし旅行を仕て真実に自然に接したり野趣の中に身を※[#「※」は「うかんむり+眞」、第3水準1−47−57、390−8]《お》いたり、幾分かにしろ修業的に得益しようと思ったなら、普通の旅行をしても左程面白い事は有りますまい。悪くすると天晴な好い若い者が、愍むべし「お茶壺」になって、ただ彼方《あっち》から此方《こっち》へ渡って歩く事になります。今後はもう国外旅行が宜さそうですネ。
底本:「露伴全集 第29巻」岩波書店
1954(昭和29)年12月4日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記を次の通りあらためました。
1.旧仮名づかいを現代仮名づかいにあらためました。
2.常用漢字表、人名漢字別表に掲げられている漢字を新字にあらためました。
ただし、人名については底本のままとしました。
3.ひらがな・カタカナの繰り返し記号は、そのまま仮名を繰り返すようあらためました。
入力:地田尚
校正:今井忠夫
2001年6月18日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング