にゃあ極《きま》ってるが明日《あした》行って見ねえ中は楽みがある、これよりほかに当《あて》は無えんだ。オイ軽蔑《さげすむ》めえぜ、馬鹿なものを買ったのも詮《せん》じつめりゃあ、相場をするのと差《ちげえ》はねえのだ、当らねえには極《き》まらねえわサ。もうこうなっちゃあ智慧も何も、有ったところで役に立たねえ、有体《ありてい》に白状すりゃこんなもんだ。
女房《にょうぼ》は眉《まゆ》を皺《しわ》めながら、
「それもそうだろうが汝《おまい》そうして当らない時はどうするつもりだエ。
「ハハハ、どうもならねえそう聞かれちゃあ。生きてる中はどうかこうか食わずにゃあいねえものだ、構うものかイ。だから裸で寝ていようというんだ。愛想《あいそ》が尽きたか、可愛想《かわいそう》な。厭気《いやき》がさしたらこの野郎に早く見切をつけやあナ、惜いもんだが別れてやらあ。汝《てめえ》が未来《このさき》に持っている果報の邪魔《じゃま》はおれはしねえ、辛《つら》いと汝が《てめえ》がおもうなら辛いつきあいはさせたくねえから。
とさすが快活《きさく》な男も少し鼻声になりながらなお酔《よい》に紛《まぎ》らして勢《いきおい》よく云
前へ
次へ
全24ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング