武《まうぶ》総常《そうじやう》の水の上に度※[#二の字点、1−2−22]遊んだ篷底《はうてい》の夢の余りによしなしごとを書きつけはしたが、もとより人を酔はさう意《こゝろ》も無い、書かずともと思つてゐるほどだから、読まずともとも思つてゐる。たゞ宿酔《しゆくすゐ》猶《なほ》残つて眼の中がむづゝく人もあらば、羅山が詩にした大河の水ほど淡いものだから、却《かへ》つて胃熱を洗ふぐらゐのことはあらうか。飲むも飲まぬも読むも読まぬも、人※[#二の字点、1−2−22]の勝手で、刀根《とね》の川波いつもさらつく同様、紙に鉛筆のあたり傍題《はうだい》。
 六人箱を枕の夢に、そも我こそは桓武《くわんむ》天皇の後胤《こういん》に鎮守府将軍|良将《よしまさ》が子、相馬の小次郎|将門《まさかど》なれ、承平天慶のむかしの恨《うら》み、利根の川水日夜に流れて滔※[#二の字点、1−2−22]《たう/\》汨※[#二の字点、1−2−22]《ゐつ/\》千古|経《ふ》れども未だ一念の痕《あと》を洗はねば、※[#「にんべん+爾」、第3水準1−14−45]《なんぢ》に欝懐の委曲を語りて、修羅《しゆら》の苦因を晴るけんとぞ思ふ、と大
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