吹川に添う一帯の地を望んでは、黯然《あんぜん》としても心も昧《くら》くなるような気持がして、しかもその薄《うっ》すりと霞んだ霞《かすみ》の底《そこ》から、
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桑を摘め摘め、爪紅さした、花洛《みやこ》女郎衆《じょろしゅ》も、桑を摘め。
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と清い清い澄み徹《とお》るような声で唱い出されたのが聞えた。もとより聞えるはずが有ろう訳は無いのであるが。
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(明治三十六年五月)
底本:「ちくま日本文学全集 幸田露伴」筑摩書房
1992(平成4)年3月20日第1刷発行
底本の親本:「露伴全集」岩波書店
※底本の「小書き片仮名ト」(JIS X 0213、1−6−81)は、「ト」に置き換えました。但し「トロリ」(底本78ページ−4行)の「ト」を除きます。
※本作品中には、今日では差別的表現として受け取れる用語が使用されています。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、あえて発表時のままとしました。(青空文庫)
入力:kompass
校正:林 幸雄
2001年10月2日公開
2003年11月25日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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