いか》を体《たい》に被《こうむ》らせ、鉄鈕《てっちゅう》もて足を繋《つな》ぎ置きけるに、俄《にわか》にして皆おのずから解脱《げだつ》し、竟《つい》に遯《のが》れ去って終るところを知らず。三司郡県将校《さんしぐんけんしょうこう》等《ら》、皆|寇《あだ》を失うを以て誅《ちゅう》せられぬ。賽児は如何《いかが》しけん其後|踪跡《そうせき》杳《よう》として知るべからず。永楽帝怒って、およそ北京《ほくけい》山東《さんとう》の尼姑《にこ》は尽《ことごと》く逮捕して京に上せ、厳重に勘問《かんもん》し、終《つい》に天下の尼姑という尼姑を逮《とら》うるに至りしが、得る能《あた》わずして止《や》み、遂に後の史家をして、妖耶《ようか》人耶《ひとか》、吾《われ》之《これ》を知らず、と云《い》わしむるに至れり。
世の伝うるところの賽児の事既に甚《はなは》だ奇、修飾を仮《か》らずして、一部|稗史《はいし》たり。女仙外史の作者の藉《か》りて以《もっ》て筆墨を鼓《こ》するも亦《また》宜《むべ》なり。然《しか》れども賽児の徒、初《はじめ》より大志ありしにはあらず、官吏の苛虐《かぎゃく》するところとなって而《しこう》して
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