力に依るべきかは、厳として対立する見解にして、その間何等の妥協|苟合《こうごう》を許されない。若し対立する見解の一方を採るならば、その所信に於て貫徹を期すべきである。所謂《いわゆる》責任と称してその都度職を辞するが如きは、其の意味の責任を果たさざるものである。幸いにして此の機を利用して、抜本|塞源《そくげん》の英断を行うもの国軍の中より出現するに非《あら》ずんば、更に〈幾度か此の不祥事を繰り返すに止ま〉るであろう。

       六

 左翼戦線が十数年来無意味の分裂抗争に、時間と精力とを浪費したる後、漸《ようや》く暴力革命主義を精算して統一戦線を形成したる時、右翼の側に依然として暴力主義の迷夢が低迷しつつある。
 今や国民は国民の総意か一部の暴力かの、二者択一の分岐点に立ちつつある。此の最先の課題を確立すると共に社会の革新を行うに足る政党と人材とを議会に送ることが急務である。二月二十日の総選挙は、夫《そ》れ自身に於ては未だ吾々を満足せしめるに足りないが、日本の黎明《れいめい》は彼《か》の総選挙より来るであろう。黎明は突如として捲《ま》き起これる妖雲《よううん》によって、暫《しばら》
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