し》、鰌《どじょう》も見えまする。
一同 (哄《どっ》と笑う)ははははははは。
白雪 この新しい鐘ヶ|淵《ふち》は、御夫婦の住居《すまい》にしょう。皆おいで。私は剣ヶ峰へ行《ゆ》くよ。……もうゆきかよいは思いのまま。お百合さん、お百合さん、一所に唄をうたいましょうね。
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たちまちまた暗し。既にして巨鐘《きょしょう》水にあり。晃、お百合と二人、晃は、竜頭《りゅうず》に頬杖《ほおづえ》つき、お百合は下に、水に裳《もすそ》をひいて、うしろに反らして手を支き、打仰いで、熟《じっ》と顔を見合せ莞爾《にっこり》と笑む。
時に月の光|煌々《こうこう》たり。
学円、高く一人|鐘楼《しょうろう》に佇《たたず》み、水に臨んで、一揖《いちゆう》し、合掌す。
月いよいよ明《あきらか》なり。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ](――幕)
[#地から1字上げ]大正二(一九一三)年三月
底本:「泉鏡花集成7」ちくま文庫、筑摩書房
1995(平成7)年12月4日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集」岩波書店
1942(昭和17)年7月刊行開始
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:染川隆俊
2002年2月22日公開
2005年9月26日修正
青空文庫作成ファイル:
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