《おっかね》え、屋体骨《やていぼね》は浮上るぜ。」
女中二人が目配せして、
「ともかくお上んなさいまし、」
「どうにか致しますから。」
「何だ、どうにかする。格子で馴染を引くような、気障《きざ》な事を言やあがる。だが心底は見届けたよ。いや、御案内引[#「引」は小書き]。」
と黄声《きなこえ》を発して、どさり、と廊下の壁に打附《ぶつか》りながら、
「どこだ、どこだ、さあ、持って来い、座敷を。」
で、突立って大手を拡げる。
「どうぞこちらへ、」
と廊下で別れて、一人が折曲《おりまが》って二階へ上る後から、どしどし乱入。とある六畳へのめずり込むと、蒲団も待たず、半股引《はんももひき》の薄汚れたので大胡坐《おおあぐら》。
「御酒《ごしゅ》をあがりますか。」
「何升お燗《かん》をしますか、と聞きねえ。仕入れてあるんじゃ追《おッ》つく[#「追つく」は底本では「追っく」]めえ。」
女中が苦笑いして立とうとすると、長々と手を伸ばして、据眼《すえまなこ》で首を振って、チョ、舌鼓を打って、
「待ちな待ちな。大夫《たゆう》前芸と仕《つかまつ》って、一ツ滝の水を走らせる、」
とふいと立って、
「鷲尾の三郎案内致せ。鵯越《ひよどりごえ》の逆落しと遣れ。裏階子《うらばしご》から便所だ、便所だ。」
どっかの夜講で聞いたそうな。
二十八
手水《ちょうず》鉢の処へめ[#「め」に傍点]組はのっそり。里心のついた振られ客のような腰附で、中庭越に下座敷をきょろきょろと[#「きょろきょろと」は底本では「きよろきょろと」]※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》したが、どこへ何んと見当附けたか、案内も待たず、元の二階へも戻らないで、とある一室《ひとま》へのっそりと入って、襖際《ふすまぎわ》へ、どさりとまた胡坐《あぐら》になる。
女中が慌《あわただ》しく駈込んで、
「まあ、どこへいらっしゃるんですか。」
と、たしなめるように云うと、
「ここにいらっしゃら。ははは、心配するな。」
「困りますよ。隣のお座敷には、お客様が有るじゃありませんか。」
「構わねえ、一向構わねえ。」
「こちらがお構いなさいませんでも、あちら様で。」
「可《い》いじゃねえか、お互《たげえ》だ。こんな処へ来て何も、向う様だって遠慮はねえ。大家様の隠居殿の葬礼《ともれい》に立つとってよ、町内が質屋
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