て、九段から、電車に乗るのは分ったの。だけどもねえ、一度|万世橋《めがね》で降りてしまって、来られなくなった事があるのよ。
そのお友達と一所に来ると、新富座の処まで教えて上げましょうッて云うんだけれど、学校でまた何か言われると悪いから、今日も同一《おなじ》電車に乗らないように、招魂社の中にしばらく居たら、男の書生さんが傍《そば》へ来て附着《くッつ》いて歩行《ある》くんですもの。私、斬られるかと思って可恐《こわ》かったわ、ねえ、お臀《しり》の肉《み》が薬になると云うんでしょう、ですもの、危いわ。
もう一生懸命にここへ来て、まあ、可《よ》かった、と思ってよ。
あのね、あの、」
と蓐《とこ》の綴糸《とじいと》を引張って、
「貴女も主税さんも、父さんに叱られてそれでこうしているんだって、可哀相だわ。私なら黙っちゃいないわ、我儘《わがまま》を云ってやるわ。だって、自分だって、母様《かあさん》が不可《いけ》ないと云うお酒を飲んで仕様が無いんですもの。自分も悪いのよ。
貴女叱られたら、おあやまんなさいよ。そしてね、父さんはね、私や母様の云う事は、それは、憎らしくってよ、ちっとも肯《き》かないけれど、人が来て頼むとねえ、何でも(厭だ。)とは言わないで、一々引受けるの。私ちゃんと伝授を知っているから、それを知らせて上げたいの、貴女が御病気で来られないんなら、小母さん、」
と隔てなく、小芳の膝に手を置いて、
「小母さんでも可《よ》うござんす。構わないで家《うち》へいらっしゃいよ。玄関の書生さんは婦《おんな》のお客様をじろじろ見るから極《きまり》が悪かったら遠慮は無いわ、ずんずん庭の方からいらっしゃい。
私がね、直ぐに二階へ連れてって、上げるわ。そうするとねえ、母様がお酒を出すでしょう。私がお酌をして酔わせてよ。アハアハ笑って、ブンと響くような大《おおき》な声を出したら、そしたらもう可いわ。
是非、主税さんを呼んで下さい。電報で――電報と云って頂戴、可くって。不可《いけな》いとか何とか、父さんがそう云ったら、膝をつかまえて離さないの。そして、お蔦さんが寂《さみ》しがって、こんなに煩らっていらっしゃると云って御覧なさい。あんなに可恐《こわ》らしくっても、あわれな話だと直《じ》きに泣くんですもの、きっと承知するわ。
そのかわり、主税さんが帰って来たら、日曜に遊びに行《ゆ》く
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