な》へ、小芳が、密《そっ》と手を入れて、上へ抱起すようにして、
「切なくはないかい、お蔦さん、起きられるかい、お前さん、無理をしては不可《いけな》いよ。」
「ああ、難有《ありがと》う、」
とようよう起直って、顱巻《はちまき》を取ると、あわれなほど振りかかる後れ毛を掻上げながら、
「何だか、骨が抜けたようで可笑《おかし》いわ、気障《きざ》だねえ、ぐったりして。」
と蓮葉《はすは》に云って、口惜《くや》しそうに力のない膝を緊《し》め合わせる。
お妙はもう六畳の縁へ立って来て、障子に掴まって覗《のぞ》いていたが、
「寝ていらっしゃいよ、よう、そうしておいでなさいよ。私がそこへ行ってよ。」
とそれまで遠慮したらしかったが、さあとなると、飜然《ひらり》と縁を切って走込むばかりの勢《いきおい》――小芳の方が一目先へ御見の済んだ馴染《なじみ》だけ、この方が便りになったか、薄くお太鼓に結んだ黒繻子のその帯へ、擦着《すりつ》くように坐って、袖のわきから顔だけ出して、はじめて逢ったお蔦の顔を、瞬もしないで凝《じっ》と視《なが》める。
肩を落して、お蔦が蒲団の外へ出ようとするのを、
「よう、そうしていらっしゃいなね。そんなにして、私は困るわ。」
「はじめまして、」
と余り白くて、血の通るのは覚束《おぼつか》ない頸《うなじ》を下げて、手を支《つ》きつつ、
「失礼でございますから、」
「よう、私困るのよ。寝ていて下さらなくっては。小母さん、そう云って下さいな。」
と気を揉んで、我を忘れて、小芳の背中をとんとんと叩いて、取次げ、と急《あせ》って云う。
その優しさが身に浸みたか、お蔦の手をしっかり握った、小芳の指も震えつつ、
「お蔦さん、可いから寝ておいでな、お嬢さんがあんなに云って下さるからさ。」
「いいえ、そんなじゃありません。切なければ直《じ》きに寝ますよ。お嬢さん、難有《ありがと》う存じます。貴嬢《あなた》、よくおいで下さいましたのね。」
「そして、よく家《うち》が知れましたわね。この辺へは、滅多においでなさいましたことはござんせんでしょうにねえ。」
小芳はまた今更感心したように熟々《つくづく》云った。
「はあ、分らなくってね。私、方々で聞いて極《きま》りが悪かったわ。探すのさえ煩《むず》かしいんですもの。何だか、あの、小母さんたちは、ちょいとは、あの、逢って下さらなか
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