るのは、五、六羽、八、九羽、どれが、その親と仔の二羽だかは紛れて知れない。
 ――二、三羽、五、六羽、十羽、十二、三羽。ここで雀たちの数を言ったついでに、それぞれの道の、学者方までもない、ちょっとわけ知りの御人《ごじん》に伺《うかが》いたい事がある。
 別の儀でない。雀の一家族は、おなじ場所では余り沢山《たくさん》には殖えないものなのであろうか知ら? 御存じの通り、稲塚《いなづか》、稲田《いなだ》、粟黍《あわきび》の実る時は、平家《へいけ》の大軍を走らした水鳥《みずどり》ほどの羽音《はおと》を立てて、畷行《なわてゆ》き、畔行《あぜゆ》くものを驚かす、夥多《おびただ》しい群団《むれ》をなす。鳴子《なるこ》も引板《ひた》も、半ば――これがための備《そなえ》だと思う。むかしのもの語《がたり》にも、年月《としつき》の経《ふ》る間には、おなじ背戸《せど》に、孫も彦《ひこ》も群《むらが》るはずだし、第一|椋鳥《むくどり》と塒《ねぐら》を賭けて戦う時の、雀の軍勢を思いたい。よしそれは別として、長年の間には、もう些《ちっ》と家族が栄えようと思うのに、十年一日と言うが、実際、――その土手三番町《どてさん
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