=苦労しもする、させもする=ていのはそりゃあ心意気でさ。」
 慶造は威勢よくぽんと一ツ胸を叩いた。
「ここにあるこッてす。顔へ済まねえをあらわして、さも嬉しそうに難有《ありがて》え、苦労させるなんて弱い音《ね》を出して御覧《ごろう》じろ、奴《やっこ》さんたちまちなめッちまいますぜ。殊に貴方だ、誰だと思ってるんだ、お言《ことば》の一ツも懸けられりゃ勿体《もってえ》ねえと心得るが可い位の扱いで、結構でがす。もっとも、まあこうやって女の手一つで立過《たてすご》して、そんな恐《おっか》ねえ処へ貴方のために参ったんだ、憎くはありません、心中者だ。ですが、そりゃ私《わっし》どもはじめ世間で感心する事で、当の対手《あいて》は何の女《むすめ》ッ子の生命《いのち》なんざ、幾つ貰ったって髢屋《かもじや》にも売れやしねえ、そんな手間で気の利いた香《こう》の物でも拵《こしら》えろと、こういった工合《ぐあい》でなくッちゃ色男は勤まりませんよ。何でも不便《ふびん》だ、可愛いと思うほど、手荒く取扱って、癇癪《かんしゃく》を起してね、横頬《よこッつら》を撲《は》りのめしてやりさえすりゃ惚れた奴あ拝みまさ。貴方も江戸児《えどッこ》じゃあがあせんか。いえさ、若山さんの小主公《わかだんな》でしょう。女《あま》の心中立《しんじゅうだて》を物珍らしそうに、世の中にゃあ出ねえの、おいらこれッきりだのと、だらしのねえ、もう、情婦《いろ》を拵えるのと、坊主になるのとは同一《おんなじ》ものじゃあございませんぜ。しかしまあ盲目《めくら》におなんなすったから、按摩《あんま》にゃあかけがえのねえ女だと、拝んでるんでしょう。でれでれとするのはお金子《かね》のある分だ、貴方のなんざ、女《あま》に縋《すが》るんだから堪《たま》りませんや。え、もし、そんなこッちゃあ女《あま》にだって愛想をつかされますぜ。貴方ほどの方がどういうもんです。いや、それとも按摩さんにゃあ相当か。」と、声を激ましていいながら、慶造は、目の見えぬ、窶《やつ》れた若山の面を見守って、目には涙を湛《たた》えていた。
「慶造!」と一喝した、渠《かれ》は蒼《あお》くなって、屹《きっ》と唇を結んだ。
「ええ、」
「用意が出来たらいつでも来い、同志の者の迎《むかい》なら、冥途《めいど》からだって辞さないんだ。失敬なことをいう、盲人《めくら》がどうした、ものを見るのが私
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