》を出《だ》して、拭《ふ》きにかゝつたが、蝙蝠傘《かうもりがさ》を片手《かたて》に持《も》つて居《ゐ》たから手《て》を空《あ》けやうとして咽喉《のど》と肩《かた》のあひだへ柄《え》を挟《はさ》んで、うつむいて、珠《たま》を拭《ぬぐ》ひかけた。
これは今《いま》までに幾度《いくたび》も私《わたし》見《み》たことのある人《ひと》で、何《なん》でも小児《こども》の時《とき》は物見高《ものみだか》いから、そら、婆《ばあ》さんが転《ころ》んだ、花《はな》が咲《さ》いた、といつて五六人|人《ひと》だかりのすることが眼《め》の及《およ》ぶ処《ところ》にあれば、必《かなら》ず立《た》つて見《み》るが何処《どこ》に因《よ》らずで場所《ばしよ》は限《かぎ》らない、すべて五十人|以上《いじやう》の人《ひと》が集会《しふくわい》したなかには必《かなら》ずこの紳士《しんし》の立交《たちまじ》つて居《ゐ》ないといふことはなかつた。
見《み》る時《とき》にいつも傍《はた》の人《もの》を誰《たれ》か知《し》らつかまへて、尻上《しりあが》りの、すました調子《てうし》で、何《なに》かものをいつて居《ゐ》なかつたことは殆《
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