う》に甚《はなはだ》しい、その間も前夜より長く圧《おさ》え付けられて苦しんだがそれもやがて何事もなく終《おわ》ったのだ、がこの二晩の出来事で私も頗《すこぶ》る怯気《おじけ》がついたので、その翌晩からは、遂に座敷を変えて寝たが、その後《ご》は別に何のこともなかった、何でもその後《ご》近所の噂に聞くと、前に住んでいたのが、陸軍の主計官とかで、その人が細君を妾《めかけ》の為《た》めに、非常に虐待したものから、細君は常に夫の無情を恨んで、口惜《くやし》い口惜《くやし》いといって遂《つい》に死んだ、その細君が、何時《いつ》も不断着《ふだんぎ》に鼠地《ねずみじ》の縞物《しまもの》のお召縮緬《めしちりめん》の衣服《きもの》を着て紫繻子《むらさきじゅす》の帯を〆《し》めていたと云うことを聞込《ききこ》んだから、私も尚更《なおさら》、いやな気が起《おこ》って早々に転居してしまった。その後《ご》其家《そこ》は如何《どう》なったか知らないが、兎《と》に角《かく》、嫌な家《うち》だった。
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房
2007(平成19)年7月10日第1刷発行
底本の親本:「怪談会」柏舎書楼
1909(明治42)年発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年9月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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