くっている。××開始、ウェートレスの英国の少女、メリーをからかってしたたか膝を折られ泣面をしている男。だが、メリーは僕を見ると恋愛相談所[#「恋愛相談所」は枠囲み]めがけて夢中に走り出した。
 ――いらっしゃい。妾の主人は、非度《ひど》いラヴ・レタの蛇なのです。恋愛過度、チタでレオ・トルストイに小説を書く方法を三万ルーブルも仕払って教ったのですが、いまの世の中で何んの役に立つものですか………。
 壁にはルノアールの偽《にせ》もの蜿蜒《えんえん》の画がかかっていた。
 しかし僕は内緒で、片隅の赤髪の女に色眼をつかった。彼女は巨大で腿《もも》のあたりは猶太《ユダヤ》女の輪廓をもって、皮膚は荒れて赤らんで堅固な体躯をしていた。
 ――君の名は? と、僕が色欲のダリアに向って聞いた。
 ――妾《わたし》、貴男の情婦、夜のボップよ。
 すると忽《たちま》ち女は死物狂い、僕に倒れかかった。
 僕とボップ、裏街の夜、アアク燈、柳暗花明の巷《ちまた》を駈け抜けると、古寺院の境内、数時間、僕はだまって経過した。
 ――ロップ、一時は駄じゃれで君をメキシコ湾だと云ったが、僕の純情知ってくれたか。
 辻自動車が疾走する、満月、天主閣、車が湖畔を疾走するとき、再びロップは僕に傾倒した。
 A・A橋の下で、ボートに乗って夜の河岸を離れて、ロップは、カルメンの五章を唄いながら櫂《かい》を水に落した。
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いくら、お前が云い寄っても、駄目よ。
トララ トララ トララ トララ
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 緑色のイルミネェション、青い眼鏡に穴をあけながら、水の上を進んで行く。
 奔流、ごろつきのような波の音が僕に英国少女メリーの靴の踵《かかと》と、乳房に鬘《かつら》をかむったような女主人を思い出させた。
 そのときロップが僕に云った。
 ――ねえ、二人でクラブへ行きましょう。スペイン式の女学生がいるわ、シャンパン飲まして欲しいの………。
 ――ロップ、紙幣と品行方正の匂いがする。
 ――よう!
 ――醜婦奴《しゅうふめ》、ガウンが百度ひらいたって、糞《くそ》。
 ――………………
 ――………………
     ――――――――――――――――――――――――
 クラブの化粧室に這入ると、ロップは××になって仰向けのまま寝てしまった。僕は浴場で屡々《しばしば》、結婚の感触を衝《う》
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