が開かれ、赤衛軍の決死隊が組織され、党員徽章が配付されると労農領事館には青天白日旗とソビエット・ロシアの聯邦《れんぽう》旗が交錯して掲げられた。
 エムパシー・シアターではアグレヴナースラビアンスキー一座がロシアの十七世紀のクラシック・オペラを開演していたが、何故か時刻になっても開場せず、出所不明のインタナショナルの放送ラジオが放送局の演劇ラジオと空中で火華を散らして戦った。マジエスチック・ホテルのティダンスは閑散として、ロシア人の踊子の赤い踵が見えず、他の金髪美人連がアクビをかみころしていた。赤色のテロリズムが東西の紡績工場を襲ったのが午後七時、黄埔《おうほ》軍官学校の軍艦飛鷹から飛行機が一台、上海の空に火薬庫を装置した。
 ボルシェヴィキに反対する白系露人が工部局のロシア義勇兵に続々加盟して、ガーデン・ブリッジ、四川路《しせんろ》橋、蘇州橋等の橋上に哨兵《しょうへい》小屋を急造して警戒を始めた。四馬路《すまろ》の雑踏のなかで支那人の労働者が過激の渡説を始めたが忽《たちま》ち警吏のために捕縛《ほばく》されてしまった。北京停車場の一号プラット・ホームに南京発列車が到着すると、奇襲弾薬が
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