だ。しかも無定見ではあるが近く彼等は解禁をなすであろう。そのときこそ米良は尖鋭な階級意識を呼び起すつもりだが? この国のブルジョワと支那の新政府の間には近く提携と一つの目標をもった条約が結ばれるであろう。
シイ・ファン・ユウが寝床に黄色い蝋のような肉体を投げ出して、
――メラ、貴方に何ができるものか、いまでは妾はプロレタリアの結束はいつか絶対のものとなるときがあると思うのだけど、そのとき妾達はやっぱり不幸なのです。所詮私達は地図に出てくる男女に過ぎないのです。
云い終ると支那の女の小さい足がカーテンのように閉まって米良もシイ・ファン・ユウも物を考えることをよしたのであった。
底本:「吉行エイスケ作品集」文園社
1997(平成9)年7月10日初版発行
1997(平成9)年7月18日第2刷発行
底本の親本:「吉行エイスケ作品集※[#ローマ数字1、1−13−21] 地図に出てくる男女」冬樹社
1977(昭和52)年9月30日第1刷発行
※底本中の「!」は全て右斜めに傾いていたが本テキストでは「!」を用いた。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番
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