》料理がお好き。まず録糸《まめそうめん》にてつくる魚翅《ふかのひれ》、湯葉《ゆば》でつくれる火腿《ハム》、たまに彼女はかつて母とともに杭州《コウシュウ》の西湖《サイこ》にある功徳林|蔬《そ》食処へ精進料理を味わいに行った。鹹《つけ》ものは蓮根《れんこん》のぬかづけが好き。だがちかごろは洋食のメニューを並べている。ときどきこっそり支那街へ海蛇《うみへび》の料理を食しにいらっしゃる。婦人病の薬だとて。
衣裳は、[#「衣裳は、」は太字]三十枚のアフタヌーン・ドレス。彼女の年齢と同じだけのイブニング・ドレス。ノラは衣裳道楽だ。アフタヌーンのスカートは短くイブニングのスカートは長い。無地より模様入が好き。色合いは赫《あか》色がかった熱帯色。だが、ノラよ。スリップにつけたレースがまんかいしてスカートから臑《すね》のあたりに××××るのはあまり感心しないがどうしたものか。赤い蛇皮《へびかわ》の靴。保護色のような薄絹の手袋。暗褐色《あんかっしょく》に赤に横縞《よこじま》のあるアンクル・サックス。色眼鏡《いろめがね》。魚の顋《えら》のように赤いガーター。
肉感は、[#「肉感は、」は太字]上海になくて
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