(明治四十一年五月二十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         八十三

      六千年前の肉塊

 近頃エジプトの医学校で木乃伊《ミイラ》の解剖分析に従事している学者がある。その研究の材料中には優に六千年を経たものもあるが、これらの肉塊を分析してみると驚くべき事には蛋白質脂酸のごとき有機成分が歴然と分解せずに存している。しかし血球などは全く痕跡もなくなっているそうである。木乃伊を作るには始め塩水に死体を漬け種々の樹脂の類を塗って固めたものらしい。これが六千年後の今日まで存しているのは、全くエジプトの空気が非常に乾燥しているためである。
[#地から1字上げ](明治四十一年六月二日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         八十四

      柔能く剛を制す

 比較的に柔らかい鋼鉄の円板を急速度に廻転させ、その縁にごく硬い鋼鉄を当てると硬い方の鉄が容易に截断《せつだん》される。この不思議な事実を研究した学者の説によれば、鉄と鉄との触れる処は摩擦のために高熱を生じ鋼鉄が熔けて行くためであるという。

      蜂の智恵

 仏国学士院の報告中にボンニ
前へ 次へ
全72ページ中67ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング