の中で不幸にして該病のために死んだのはわずかに二人しかない。すなわち恐水病というものはほとんど全く予防する事が出来ると云ってもよい。
[#地から1字上げ](明治四十年十月二十八日『東京朝日新聞』)
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二十八
癌腫《がんしゅ》の研究
英国では帝室の保護の下に癌の研究のみをやっている所がある。その基本金の現額は十一万八千余ポンドで、そのうち四万ポンドは某富豪が金婚式の際に寄附したそうである。ここの所長のパシュフォード博士が近頃報告したところに拠れば、癌の療法と称するものは色々あるが、いずれもあまり確実な効験はない。評判のあったトリプシンもあまりきかぬ。今日のところやはり外科手術で患部を取り去る外はあるまいという事である。
[#地から1字上げ](明治四十年十月二十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]
二十九
海水用セメント
普通のセメントは長く海水中に在れば次第に分解して崩れるので、これを防ぐ方法はないかと色々研究した人の説によれば、少量でも礬土《アルミナ》を含んだセメントはこの分解が急に起りにくい。
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