話である。その石炭なるものは太古の植物から生じたものだという事を考えるとなおさら面白い。
[#地から1字上げ](明治四十年十月十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]
二十
ボートレースに無線電話
今年の七月、北米の大湖エリーの水上で端艇競漕《ボートレース》のあった時、その時々刻々の景況を陸上に報ずるためテルマと名づくる小蒸気船に無線電話機を載せて現場に臨ませた。これがおそらく無線電話の実用された最初の例であろう。その成績は予想外に良かった。話し声を聞いて相手が誰だかという事さえ知れたそうである。船は十八トンでアンテナを張った帆柱が低かったにもかかわらず四マイルの距離で通話自在であったという。
[#地から1字上げ](明治四十年十月十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]
二十一
日本の舞い鼠
子供の楽しみに飼うはつか鼠にちょっと歩いてはクルクルまわりまた歩いては舞ういわゆる舞い鼠というのがある。あの舞うのは何故かと調べてみると、内耳の一部をなしている三半規管の構造が不完全なため、始終に眩惑《めまい》を起すからだ
前へ
次へ
全72ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング