電流計の鏡が著しく動く。この事を利用して重罪嫌疑者の審問に使おうというのがいわゆる測心器の目的であるそうな。先ず嫌疑者の両の手に器械の電極をシッカリ握らせておいて、色々の問を掛ける、そのうちにギックリ胸にこたえる事があると器械の鏡から反射する光線がピクリと動く。いくら平気を粧うて胡麻化そうとしても駄目だという事である。この器械がいよいよ成効するかどうかは未だ判らぬが、とにかく面白い発明である。も少し早くこの器械が出来ていてそして男三郎《おさぶろう》の審問などに使ったら面白かったろうに。
電気療法のさまざま
強い電光で皮膚病、殊に狼瘡《ろうそう》などを治すいわゆるフィンゼン療法は数年前から行われている。またエッキス線で照らして皮膚や血液の病を癒《いや》す事も往々あるが、しかしこの線のために癌腫《がんしゅ》を生じた例があるから注意を要するとの事。次に電気浴の新しいやり方は盥《たらい》四つに四肢を別々に入れ電気を通すので心臓病や痛風などに好いという。また強い電光に全身を浴するとトルコ風呂よりも薬になるそうである。次にちょっと耳新しいのはロシアの某医師が患者の咽喉の中へ紫色の
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