ろしい病気に罹《かか》るそうである。この病のために死んだ人は米国だけで既に四人ある。第一に斃《たお》れたのが有名なエジソンの助手某。次にはボストンの医師某。第三がサンフランシスコの一婦人。第四に近頃やられたのはロチェスターの外科医ウィーゲル博士だという。この人は始めにその右手と左の指三本を切断したがなお駄目で、次には右肩より胸にかけて肉を取り去ったが、それでも遂に無効であったという。この恐ろしい病気は原因も全く分らず治療の方法も知れぬとの事である。
[#地から1字上げ](明治四十年十月九日『東京朝日新聞』)
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十六
脳髄の保存法
解剖学や人類学の参考品として脳を保存する方法を詳しく研究した学者の説に従えば、普通大の脳を漬けておく液にはフォルマリンを三、蒸餾水を四五ないし二五、酒精《アルコール》を五二ないし七五の割合に交ぜたものた宜《よ》い、そして脳の大きいほど水を少なく酒精の方を割合に多くするがよいという事である。
[#地から1字上げ](明治四十年十月十一日『東京朝日新聞』)
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十七
船
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