に変じて蓄え、必要に応じて勝手に使う事が出来るのである。現に英国バーミンガムでは十一年前から風車で電灯を点じている人がある。その風車は直径三十五フィートでこれを五十フィートの櫓の上に据え付け、十六燭の電灯二百個を点ずる外に、なお五馬力のモートル三個を運転しているが、未だかつて停電などを起さぬという事である。石炭や水力を得難い土地では風車を用いた方が石油機関よりは利益だという。
[#地から1字上げ](明治四十年十月三日『東京朝日新聞』)
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         十三

      霧中の汽車信号

 鉄道線路の傍に巨人のごとく直立しあるいは片手あるいは両手を拡げて線路の安否を知らせる普通の信号標は、通常の天気ならば昼夜の別なく有効であるが、ただ霧が掛かって数歩の外は見え分かぬような日には何の役にも立たぬ。この不便と危険を防ぐため、近頃米国大西鉄道で採用する発音信号機というのは簡単な仕掛けであるが数ケ月間の試験によって有効な事が確かめられた。危険の時には汽笛、安全の場合には鐘を鳴らす事になっている。
[#地から1字上げ](明治四十年十月四日『東京朝日新聞』)
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