流言蜚語
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)火花を瓦斯《ガス》の中で飛ばせる
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)流言|蜚語《ひご》の伝播
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十三年九月『東京日日新聞』)
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長い管の中へ、水素と酸素とを適当な割合に混合したものを入れておく、そうしてその管の一端に近いところで、小さな電気の火花を瓦斯《ガス》の中で飛ばせる、するとその火花のところで始まった燃焼が、次へ次へと伝播《でんぱ》して行く、伝播の速度が急激に増加し、遂にいわゆる爆発の波となって、驚くべき速度で進行して行く。これはよく知られた事である。
ところが水素の混合の割合があまり少な過ぎるか、あるいは多過ぎると、たとえ火花を飛ばせても燃焼が起らない。尤も火花のすぐそばでは、火花のために化学作用が起るが、そういう作用が、四方へ伝播しないで、そこ限りですんでしまう。
流言|蜚語《ひご》の伝播の状況には、前記の燃焼の伝播の状況と、形式の上から見て幾分か類似した点がある。
最初の火花
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