物質群として見た動物群
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)駿河湾《するがわん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](昭和八年四月、理学界)
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 せんだって、駿河湾《するがわん》北端に近い漁場における鰺《あじ》の漁獲高と伊豆《いず》付近の地震の頻度《ひんど》との間にある関係があるらしいということについて簡単な調査の結果を発表したことがあった。このように純粋に物質的な現象、すなわち地震のような現象と、生物的、かつ人為的要素の錯雑した漁獲といったようなものとの間の相関を取り扱うことが科学的に許容されるかどうかという問題については、往々物理学者の側でもまた生理学者の側でも疑問をさしはさむ人が存するようである。近ごろまた自分の知人の物理学者が魚群の運動に関する研究に物理学的の解析方法を応用しておもしろい研究をしているのであるが、これに対しても、生理学者の側では「生物の事が物理学でわかるはずがない」という簡単な理由から、その研究の結果に正当な注意の目を向けることなしに看過する傾向があるかと思われる。
 人
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