俳句の型式とその進化
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)凌駕《りょうが》して

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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 三十年ほどの間すっかり俳句の世間から遠ざかって仮寝をしていた間に、いろいろな「新型式俳句」が発生しているのを、やっとこのごろ目をさましてはじめて気がついて驚いているところである。二十二字三字四字から二十五字六字というのがあるかと思うと三十四字五字というのもある。文字数においてすでに短歌の三十一文字を凌駕《りょうが》しているのであるが、一方ではまた短歌のほうでも負けていないで、五十文字ぐらいは普通だし六十字ぐらいまではたいして珍しくもないようである。
 こういう新型式についていろいろ是非の議論もあるようである。そういう新型式を俳句とか短歌とかいう名前で呼んでよいか悪いかというような問題もあるが、それは元来議論にならない問題であって、議論をしても切りのない水掛け論に終わるほかはない。それと同様に、そういう形式の詩を作ってはいけないとか作ってもいいとかいうことも議論にならない事である
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