見いだすのは私には困難である。
それで私は現在あるがままの相対性理論がどこまで保存されるかという事は一つの疑問になりうると思う。しかしこれに反して、どうしても疑問にならない唯一の確実な事実は、アインシュタインの相対性原理というものが現われ、研究され、少なくも大部分の当代の学界に明白な存在を認められたという事実である。これだけの事実はいかなる疑い深い人でも認めないわけにはいかないだろうと思う。
これはしかし大きな事実ではあるまいか。科学の学説としてこれ以上を望む事がはたして可能であるかどうか、少なくも従来の歴史は明らかにそういう期待を否定している。
こういうわけで私はアインシュタインの出現が少しもニュートンの仕事の偉大さを傷つけないと同様に、アインシュタインの後にきたるべきXやYのために彼の仕事の立派さがそこなわれるべきものでないと思っている。
もしこういう学説が一朝にしてくつがえされ、またそのために創設者の偉さが一時に消滅するような事が可能だと思う人があれば、それはおそらく科学というものの本質に対する根本的の誤解から生じた誤りであろう。
いかなる場合にもアインシュタインの相対
前へ
次へ
全17ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング