子規の追憶
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)子規《しき》の追憶について

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ある時|颱風《たいふう》の話から

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](昭和三年九月『日本及日本人』)
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 子規《しき》の追憶については数年前『ホトトギス』にローマ字文を掲載してもらったことがある。今度これを書くのに参考したいと思って捜したが、その頃の雑誌が手許《てもと》に見当らない。とにかく同じような事を二度は書きたくないから、前に書かなかったと思うことだけを記すことにする。

         一

 自然科学に関する話題にも子規はかなりの興味を有《も》って居たように思われる。当時自分は訪問してそういう方面のどんな話をしていたかは思い出せないが、ただ一つ覚えていることがある。ある時|颱風《たいふう》の話からそのエネルギーの莫大なこと、それをどうにかして人間に有益なように利用するようにしたいというようなことを話したら、大変にそれを面白がった。暴風の害を避けようというので
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