ょく》や割れ目やすべり面の週期性に因って第二次的に決定される地形の週期性のあること、それによってまたあらゆる天然ないし人間的な週期性が現われることも注意に値いする。
 河流の蛇行径路《メアンダー》については従来いろいろの研究があり、かの有名なアルベルト・アインシュタインまでが一説を出していたようである。しかし場合によっては、これが単に河水の浸蝕作用《しんしょくさよう》だけではなくて、もっと第一次的な地殻《ちかく》変形の週期性によって、たとえ全部決定されずとも、かなり影響された場合がありはしないかと考えられる。蛇行《だこう》の波長が河床《かしょう》の幅に対して長いような場合に特にこれが問題になるであろう。これは地形学者の再検討をわずらわしたい問題である。
 以上述べたものの多くは、言わば「並行縞《へいこうじま》」と呼ばれるべき形態のものであったが、このほかになお「放射縞」と言わるべきものがある。もっとも、上述の中でも、噴泉塔の縞や、鈴木《すずき》君の円板の割れ目などもむしろこの放射型に属するものであったが、このいわゆる放射縞の現象の中で、最も顕著で古くから知られているものの一つは、放電のリヒテンベルグ形像である。これの陰極像などは立派に週期的と呼ばるべきものである。この像の生成についてはずいぶんいろいろ説があり、わが国の吉田卯三郎《よしだうさぶろう》博士の説もその中の重要なものとして知られているが、しかしこの場合にもまた、いつものように、この週期性の決定要素についてはまだなんらの説明を聞かず、のみならずこの事を問題にする人すら少ないように見える。北海道大学の伊藤直《いとうなおし》君の研究にかかる低度真空中の放電による放射形縞についても同様の事が言われる。自分はかつて、例の液の熱対流による柱状渦《ちゅうじょうか》の一例として、放射形の縞模様を作ることができた。また床上に流した石油に点火するときその炎の前面が花形に進行する現象からもまた、放射形柱状渦の存在を推定したことがあった。それの類推的想像と、もう一つは完全流体の速度の場と静電気的な力の場との類似から、例の不謹慎な空想をたくましくして、もしも放電の場合においても電場の方向に垂直なある不安定があれば、それによって、こういう週期性が生じはせぬかと思ったことがあり、多くの人にその考えを話したことがある。これも一つのヒントに
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