気へ放散するのを一部その中に貯えておく事である。炭の活け方には色々あるが、要するに炭を並べて真中に縦穴を作り穴の下の方に横穴を作れば全体が丁度ストーヴの煙突と同じ作用をして空気の流通を促し炭の燃えるのを助ける訳になる。炭火から出る炭酸|瓦斯《ガス》は熱した空気と一緒に天井へ上り障子の紙を透して外へ出るから日本の家屋ではそう恐ろしい害はない。また炭火の中で炭酸瓦斯が還元して一酸化炭素という恐ろしい毒瓦斯を作る事はあるが、これは大抵青い焔を上げて燃えてしまう。[#地から1字上げ](明治四十一年十一月十一日『東京朝日新聞』)
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九
炭
木材を蒸焼《むしやき》にすると大抵の有機物は分解して一部は瓦斯になって逃げ出し、残ったのは純粋な炭素と灰分とが主なものである、これがすなわち木炭である。質の粗密によってあるいは燃え切りやすいのもあれば、燃えにくく消えやすいのもある。いずれも内部には無数な細かい穴があってその間に多量の瓦斯を吸収する性質がある、炭が臭気止めに使われるのはこのためである。近頃|檳榔子《びんろうじ》の炭を使って極寒まで冷した空気を吸
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