出て来た。
なんだかこんな風な夢であったのですが、今この新短歌を読んでいると、不思議にこの夢を想い出し、そうしてこれらの詩の中に私の夢のどうしても想い出されないかけらが隠れているのではないかという気がするのです。
『立像』の詩はおそらくそういう風な、常套の言葉で現わしにくいものを表現しようと狙っているのではないかという気がしました。
ただ、見馴れない吾々にはどうもあまりひねり過ぎたと思われるような、あるいは無用に誇張したと思われるような辞句が目に立って、却って感興をそがれるような気のするのもありました。一体にもう少し修辞法を練る余地があるのではないかと思われました。
日本の従来の「短歌」とは形式ばかりでなく内容的にも大分ちがった別物とは思いますが、こういう新しい詩形に固有な新しい詩の世界を創造して行くのは面白いことだろうと思われます。それにはもう少し誰にも分かりやすい言葉で誰の頭にもぴんと響くようなものを捕えて来るのが捷径《しょうけい》ではないかという気がしますが如何でしょうか。
思いつくままを書きました。門外漢の妄語として御聞き捨てを願います。
[#地から1字上げ](昭和九年
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