「カタ」(潟)はタミール語の海 kadal に近い。
 朝鮮のパーターはやはり「ワタ」の群に入れ得られよう。
「ナダ」は梵語の川 nadi に似ている。

「カハ」(川、河、カワ)は「河《ホー》」と実際に縁がありそうである。その他にはシンハリースの ganga(川)とわずかばかり似るだけで、他にちょっと相手が見つからない。
「ナガレ」はもちろん「流れ」であるが、ある人の話では「ナガ」は「長」で「ルル」が「流」であろうとの事である。これを「リウ」と読むとギリシアの「レオ」(流れる)と近い。
 トルコの「ネフル nehr」(川)はhを例のgにすると、「ナガレ」に近よる。
 朝鮮の「ナイ」(川)とアイヌの「ナイ」(川、谷)はそっくりであることから見ると日本内地でも同じ言葉で川を意味する地名がありそうに思う。
 土佐に奈半利《なはり》川と伊尾木《いおき》川とが並んでいる。おもしろいことには、アラビア語の川は「ナフル」、ヘブライのが「ナハル」「ナーバール」等。フィン語の川は yoki 「ヨキ」である。もちろん、直接の縁があろうとは思われぬ。また上記の川名も川の名が先か土地の名が先か、それもわから
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